JEN CITY

Case8:書斎にて

夏休み、親戚のおじさんの家に一人で遊びに来たの。
私って方向感覚がいいんでしょうね。
お母さんが言ってた予定の時間よりも早く着いちゃった。
だけど・・・

「こんにちはー」
どうやらおじさんいないみたい。
庭にまわってみると窓が開いていた。
縁側には無造作に本が置いてあり、風がページをめくっている。

「おじゃましまーす」
庭からあがりこんだ私は
一直線に2階の部屋に向かった。

おじさんは読書好きで、
遊びに来たら大抵いつもこの部屋にいるのだ。
「おじさん、おじゃまします」
彼の存在を半ば確信してドアを開けたが、
誰もいなかった。もう・・・

天井まで届く本棚に
ぎっしりと収められた本を眺めながら部屋を一周する。
そして何気なく一冊の本を抜き取った。

「キャッ!!」

なに!?
手にした瞬間、体に電気が走ったような感覚に襲われた。
はずみで落としてしまった本を恐る恐る取り上げる。
その本に書かれていたものは・・・

釣りバカ…スズキ?

心臓が暴れ始めた。
なぜ? ワケがわからない。
本を裏返すと、そこには・・・

スズキの釣り講座が!

スズキ…硬骨魚類。スズキ科。
本州以南の沿岸部に生息し、
特に塩分濃度の濃い河口付近に多く見られる。
時には河川上流の居酒屋までさかのぼる。

えっ!?

釣り方…投げ釣りが一番釣り易い。
缶ビールの1缶付けの餌で、目の色が変化したような所を狙う。
アタリがあったら、十分飲ませてからアワセることが大切。

はっ??
全くワケがわからない。

「JEN CITYだよ…」

驚いて振り向くと、
お腹を押さえげっそりとしたおじさんが
トイレットペーパーを抱えこちらを睨んでいた。

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